神戸経済ニュース 編集長ブログ

神戸経済ニュース(https://news.kobekeizai.jp)の編集長・山本学のブログです

おじさんSNSの課題

 神戸市長のツイッター撤退は、やはりがっかりした。自治体の首長と住民が直接対話できる経路など、いくらあっても多すぎるということはない。自治体の首長が情報を発信する経路を絞ることによって得をするのは、結局のところ市役所の記者クラブに加盟をしている伝統的なメディアだというのも、これまた釈然としない。このことで、ITに明るくない「おじさん」がSNSを運営する際の課題が改めて印象付けられた。要するにリテラシー不足なのだ。

 40代後半から50代よりも年上の世代の人たちの間では、なぜかネットを「気軽に発言できる場所」だと勘違いしているケースが多い。神戸市長の場合も、酔っ払った勢いで書いてのちに削除したのを、本人が記者会見という公的な発言が求められる場で認めた経緯もあった。フォロワーがたくさんいれば、少なくともその人たちには自分の発言が瞬時に届くという、自覚に欠ける面は大きかったろう。そこは味方のいない世界。1990年ごろのパソコン通信とは違うのだ。これは明石市長が、企業の納税データをツイッターでさらしてしまったという失態にも共通しているように思える。

 それに神戸市長はSNSの運営が負担になっていたとも言っていた。彼はブログ、フェイスブックの個人ページ、フェイスブックページ(昔のファンページ)、ツイッターという4媒体で全て記事を書き下ろしていた。「個人的に言いたいことを伝える」という目的は同じなのに、媒体によってコンテンツを「縦割り行政」していたため作業が増えるという有様で、そりゃあ負担は大きいだろうと思われる。すべてのメディアを連動させるべきで、それによって「あっちとこっちで違うこと言っている」という批判も避けられる、というアドバイスをできる人が周りにいないのかもしれない。

 ところで政治家すなわち選挙で当選することが求められる人たちがSNSで情報発信する目的は多くの場合、ものすごく広い意味での選挙運動ということだろう。仮に負担になっても、発信を続けたいと思うのは、まあ次の選挙までに支持者らとのコミュニケーション維持したり、支持者を増やしたりといったねらいが一般論として想像できる。その手段を1つでも断つ判断をしたのだとしたら、常識的な読み取り方としては、次の選挙には出馬しないのを宣言したも同然ということになるのではないか。あるいは「ツイッターなんかなくても選挙は盤石」とばかりに、過去最高得票を2回連続獲得した現職市長の余裕なんだろうか?