神戸経済ニュース 編集長ブログ

神戸経済ニュース(https://news.kobekeizai.jp)の編集長・山本学のブログです

イントネーション

本来「アクセント」というべきところを「イントネーション」と誤った用例を、特にテレビで多く見かける。どうでもいいけど非常に気になる。いわゆる「お国なまり」は、すべてアクセントだ。イントネーションは日本語でいうと抑揚。大げさな話し方をする人を「抑揚たっぷり」というけど、イントネーションはそういう話のはず。誰が言い出したのか知らんけど、この人は日本語訳を間違って覚えているな、ということは多い。本当にどうでもいいけど。

光陰矢の如し

JR東日本発車メロディー「SHシリーズ」(塩塚博さんが作曲したシリーズ)が誕生してから30周年だそうです。そんなに経つのね。確かに僕が上京したときは、すでに東京の駅では発車メロディーが一般的だったわ。高校の時は「せせらぎ」(当時、最も一般的だった発車メロディ、板垣牧人さん作曲)を耳コピしたのを思い出します。

地域通貨とフードドライブ

 地域通貨の問題点は、ひとえに「通貨価値が不明のため流通しない」ということに尽きるだろう。普及を目的に日本円との交換を約束した瞬間に、地域通貨は有価証券というか少なくとも金融商品になるので、素人には扱えないものになるから、結局は普及しないという循環になる。

 仮に地域通貨を通貨として使えるように、日本円と交換することを約束したとしても、通貨の発行体(通貨発行者)の信用力によって交換レートが日々変化することだろう。そうした諸問題を一挙に理解するためのシミュレーションとして思い出したのは、「溜池通信」さんの「みずほ銀行券」だ。

 

 ところで「援助物資」に需給調整は難しい。施設の子どもたちにと寄付された生鮮食品は、実は消化できずにこっそり捨てられている現実があるという。かくなる上は、子どもたちが欲しい時に欲しい食品を調達できるようにと、地域通貨を使おうという発想がある。物を寄付する代わりに地域通貨を発行して、必要に応じて使ってもらう形だ。

 お金を寄付するのではなく、使える店舗を限定することで、薬物などの反社会的な品目にお金を投じなくて済むようにするのが狙いだという。発想としては地域通貨というより商品券やクーポンに似ている。

 フードドライブで生鮮品を集めるのは無理かもしれないが、ちょっとした冷蔵が必要な物でも公共の冷蔵庫(可能なのかわからないが)の運営費があれば、子供食堂福祉施設などの献立に幅が出るだろう。子供食堂が冷蔵庫内の食品と引き換えにクーポンで支払いができるとすれば、クーポンを発行した企業の善意も生きるというわけだ。公共の冷蔵庫も早い者勝ちにならず済む。

 肝要なのはクーポンを多目的化して、通貨に近づけば近づくほど一種のインフレ的な現象が起きてクーポンが使いにくくなるということだ。だから資本主義の国であり、貨幣経済の国であるアメリカではクーポンが発達したのだろう。地域通貨といわずにクーポンと割り切ってしまえば、発行にかかる費用を行政が一部負担するといった支援もしやすくなるのではないか。

 

9月27日付の神戸新聞1面記事「神戸港の建機輸出過去最高」への違和感

 9月27日付の神戸新聞1面に掲載された記事「神戸港の建機輸出過去最高  22年 5062億円、国内シェア3割」は、とても違和感のある記事だった。細かいことかもしれないが、いちおう書き留めておく。

 まず記事が掲載されたタイミングが謎だった。記事が伝えたファクトは「神戸港から2022年に輸出された建設機械が、金額ベースで過去最高を更新し、同港の輸出品目別シェアで初めてトップとなったことが分かった」という。貿易統計では発表される資料に「建設機械」という項目はなく、「建設用・鉱山用機械」として毎月発表されており、四半期ごとにまとめが出ている。従って、神戸港から2022年に輸出された建設用・鉱山用機械が金額ベースで過去最高を更新し、神戸港の輸出品目別シェアで初めてトップになったことが発表されたのは、今年の1月19日のことだった。

 「建設用・鉱山用機械」のうち「建設機械」だけの数値が明らかになったのなら、10カ月近くが経過しても報道に値するのかもしれないけれど、神戸新聞が引用した数字は「5062億円」。「建設用・鉱山用機械」の数字で、記事にもそう書いてあり、それ以外の科目の数字は引用されていない。だから「建設機械」と言い切るのはどうなんだろうか。そもそも、いわゆるショベルカーやブルドーザーは建設用と鉱山用を厳密に区別ができるのだろうか。

 それと神戸新聞は、神戸港からの「建設機械」の輸出が増えた背景として、地域経済面に「新型コロナウイルス禍後に各国でインフラ投資が活発になったのに合わせ、日本からの輸出が急激に増えた」としている。本当だろうか。「インフラ投資活発」と小見出しにとってある割には「各国」の「インフラ投資」に関する説明は皆無だ。

 増え方が顕著だった輸出先は、断トツだった米国こそ神戸新聞の記事で触れているが、その次に多かったのはサウジアラビア、3番目がインドネシアだった。普通に考えれば石油や石炭の産出国であり、鉱山用機械の需要が高まった、ということになるのではないか。もともと石油や石炭の国際価格と、神戸港からの建設用・鉱山用機械の出荷額には、緩やかながら相関性が指摘されていた。普通に考えればそうなるのだから、「インフラ投資」を小見出しにまで取るのなら、それについての言及が必要だろう。それがなくては、「建設機械」の輸出が増えた説明にはなり得ない。

 「インフラ投資」についても常識的に考えると、21世紀に入ってから「インフラ投資」が活発に行われてきた新興国でのインフラ建設は、22年は減少局面であったことが想定される。なぜなら米国が3月に利上げを始め、年初に0.25%だった政策金利は5.50%まで上昇した。それまで運用難で新興国に流れていた資金が、急速に米国に回帰したのは為替レートでのドルの独歩高に表れた。米国から流出した潤沢な資金を活用して、アフリカなどへの投資を積極化していた中国も、いまとなってはご覧の有り様だ。2022年はそういう流れができる1年だった。そこで「インフラ投資活発」といわれても、疑問しか残らない。

 加えて外国為替相場の影響に言及がないのも誠に残念だ。貿易統計は貿易額を円建てで発表するが、販売する建設用・鉱山用機械は現地通貨建てで販売するのが普通だ。去年の100ドルと今年の100ドルは円換算値が当然異なる。こうした混乱を避けるために税関は毎月、平均為替レートを発表していて、通称「税関長レート」として知られている。年に2回、暦年と年度で年間の平均為替レートを発表しているので、これを考慮する必要があったはず。建設用・鉱山用機械に抑えられて2位に沈んだ「プラスチック」にしても輸出額自体は増えている。そもそも神戸港の貿易額自体、22年は過去最高だった。為替レートを見れば分かるが、円安によって膨張した面が大きい。本当に需要増に伴って輸出額が増えたのか確認するために、「建設機械」の輸出が数量ベースで増えたのか、建機メーカーに電話でひとこと聞けば分かるはずだ。

 神戸港から建設機械の輸出が多い理由について、神戸市の担当者による「名だたるメーカーの拠点が神戸港周辺に集積しているから」という説明を引用しているが、そんなことは今に始まったことではない。建設用・鉱山用機械は、ずいぶん前から神戸港の主要な輸出品だ。22年に順位が逆転するほど輸出が増えた理由は「建機メーカーがたくさんあるから」では、説明にはなっていない。RORO船の話も実は同様だ。輸出品が乗り切らないので船を大型化したとか、船が発着する頻度が高まっているという話ではないのであれば、そもそも神戸港の施設が貧弱だという話であり、神戸市が在来・総合貨物バースの見直しをしたいという意向に通じるものがある。

 しかも特に米国向けなど、特にインフラ建設などにも多用する小型の建設機械は、コンテナで輸出するケースも多い。大型の建設用・鉱山用機械は、ある程度分解してコンテナに詰め、現地で再び組み立てる。理由は圧倒的にコンテナ便のほうが便数が多いからだ。1〜2週間に1回の寄港であるワレニウス・ウィルヘルムセン(自動車船・RORO船の専業船社)の北米便に対し、コンテナ船は複数の船社から週末を除いてほぼ毎日(月に24便)北米便がある。輸出の金額や数量を問題にするときは、どちらに目を向けるべきかは明らかだろう。

 他にもいろいろ疑問は多かったが、そんなこんなを思いつくままに書いていると、結構な文字数と時間を食ってしまった。いずれにしても学生のリポートなら再提出だ。これは、たまたま筆者が筆者なりに知識のある分野だから「違和感」に気づいたのだけれど、1面に掲載された記事でこうなのだとすれば、神戸新聞は一事が万事この調子なのだろうか。であれば大変困ったことだ。若手の記者が誤った記事を書いても(それ自体はナイストライなのだけど)、デスクや記事審査(校閲)といったチェック機能が働かないということであり、同社のガバナンスに対する疑念にもつながりかねない。経営状況は厳しいのかもしれないが、現場の記者がまじめに取材しているのは毎日見かけているので、神戸新聞にはがんばってほしいです。