神戸経済ニュース 編集長ブログ

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4月とか9月とか、両方あればよいのでは。学校の始業について

 学校の始業時期を4月から9月に変更する議論が出ている。9月に変えたい派の根拠も、変えたくない派の根拠もよく分からない。そもそも、学校だけがなぜ4月(または9月)に一斉に始まらなくてはならないのか。

 就職のことを考えるとすれば、企業は通年採用制に移行する過渡期だ。新卒一括採用が今後、なくなるのかどうかは分からない。だが、ロボット技術の発達でいわゆる工場労働者のような規格化された労働力の必要性が薄れることを考えれば、新卒一括採用も必要性が薄れていくことは間違いない。

 それに、企業の1年間を示す決算期は、別にいつ始めてもよい。上場会社の約8割は3月期決算、つまり4月1日に始まって翌年3月末までの1年間で業績を計算する。神戸の上場企業だと、シスメックス川崎重工業神戸製鋼所などがそうだ。しかし同じ3月期でも、3月20日が期末で、3月21日に新年度という会社もある。アジュバンコスメジャパンがそうだ。

 1月に始まって12月に終わる、暦年と決算期が同じなのは住友ゴム工業、アシックス、ノーリツなど。世界的にみると、むしろこちらの方が主流だ。個人事業や、サラリーマン個人の収入も税務上、12月決算という形になっている。

 百貨店やスーパーなどの小売業は2月期決算が多い。大阪にはキーエンスというセンサーの会社があって、いわゆる節税のために決算期をコロコロ変えていて、業績が過去と比較しにくいので投資家には不評だったが、別に違法ではない。企業だって必ず4月ではなくて、決算期に合わせて採用できれば、そりゃあ予算も立てやすいだろう。

 たとえば学校によって1月、4月、9月といった具合にスタートの時期が異なれば、児童や生徒の側の選択肢が広がる。1月に始まる学校に入学したけれど、合わなかったから4月始まりの学校に転校、といったことだってできる。

 学期制にも多様性が出てくるだろう。長い休みが学校外での学習の機会だとするならば、夏ではなくて秋の気候のいい時期に長い休みを設定してもよさそうなものだ。

 学校の始業を4月から9月に移したい勢力は昔からいた。別にそれは時代の流れでも、新しいことでも、なんでもないのではないか。むしろ9月でなくてはならない、と選択肢を1つに固定しようとする動きが、利権の誘導のように見えて古めかしい。

 だから新型コロナウイルスの混乱に乗じて、火事場泥棒的に変更してしまうのは、やはり子供に見せる大人の態度としてかなり問題があると言わざるを得ない。議論するべきことがあるとするなら、学校長の判断で何月始まりか自由にできるようにすることだろう。