神戸経済ニュース 編集長ブログ

神戸経済ニュース(https://news.kobekeizai.jp)の編集長・山本学のブログです

ゼレンスキーにしゃもじ

 岸田さんがウクライナのゼレンスキー大統領にしゃもじを贈ったのが賛否両論になっているけど、いい仕事だったんじゃないかと思う。そもそも日本はG7の他の6カ国みたいに武器供与はできないので、戦闘機や戦車のおみやげはありえない。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻はどう考えても不合理だ。必勝を祈願するのは当然と言えば当然だろう。

 しゃもじは「飯を取る」ものなので「敵を召し取る」という縁起担ぎだというのはそうなのだけれど、G7の議長としてウクライナに冷や飯を食わせることはないというメッセージとも読み取れる。それに、しゃもじは和食の業界用語で「ミヤジマ」。広島・宮島の名産品だ。広島を連想させることで「ロシアに原爆を落とさせるようなことはしない」というメッセージと読み取ることも可能だろう。

 そんなこんなで、しゃもじのプレゼントを巡って、ロシアがカンカンに怒るのも無理はないと思う。そのうえで、いろんな意味に読み取れるプレゼントをして、岸田さん本人は「別に地元の名物を贈っただけですよ」と言い切るという、かなり高等な外交、というかコミュニケーションのテクニックを駆使しちゃってるわけですね。

 たまにいるでしょ。微妙なプレゼントしておいて「深い意味はないよ」って、飄々としてる人。「意味ないわけないやろ」みたいな。ちなみに岸田さん、専任の外務大臣としては最も長く外務大臣だった人ですよね(兼務で外相だった人はもっと長い人がいるらしいけど)。だから、その辺のことは普通にわきまえるんじゃないのかな。

 で、批判がつまんないわけですよ。やれ「しゃもじは緊張感がない」だの、「必勝じゃなく終戦だろ」だの、そんな一面的な見方しかできんのかと。批判するのなら、なるほどウマいね、と膝の1つも叩きたくなるような批判でないと、まったく批判にならないんではないのかな。まあ報道に「機微」だとか「難しいこと」が御法度の、テレビや大新聞の人たちは何ていうか知らんけど。